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2023 interview #12強化指導部長 井上伸

コミュニケーションで連携力を高めパリパラリンピックでメダル獲得を誓う 

リオデジャネイロパラリンピックでメダルを獲得し、一躍有名になった『ボッチャ』。2021年に行われた東京パラリンピックでは、初の金メダルも獲得するなど、ボッチャ日本代表『火ノ玉JAPAN』は躍進を続けています。そして2022年に新チームが発足し、新しい監督に井上伸さんが抜擢されました。そこで、井上監督の人となり、そして新生火ノ玉JAPANがパリパラリンピックに向けてどんな取り組みを行っているのかに迫ります。

氏名:井上 伸(いのうえ しん)
社会福祉法人四天王寺福祉事業団四天王寺和らぎ苑理学療法士。一般社団法人日本ボッチャ協会強化指導部長。
中村拓海選手と出会ったことがボッチャを指導するきっかけとなり、ボッチャの世界に本格的に足を踏み入れ、東京パラリンピックではトレーナーとして火ノ玉JAPANに貢献。東京パラリンピック後は代表監督に任命され、現在は火ノ玉JAPANの新監督としてチームを率いている。

——今はボッチャ日本代表『火ノ玉JAPAN』の監督をされている井上伸監督が、ボッチャと関わりを持つようになったきっかけを教えていただけますか。

井上:元々は理学療法士として病院に勤務していました。そのとき、中村拓海選手と出会ったんですね。彼がまだ小学生くらいのときだったんですけど、何かスポーツをしたいというので、できるものを探してボッチャを勧めたんです。最初はボールを投げられなかったんですが、ああしてみよう、こうしてみようと試行錯誤しながら自分で投げるようになったんですね。すると「これなら自分でもできるかも」と言ってくれたのです。本人が自分の意志で投げたい、と言ってくれたことがとてもうれしくて、僕の中では彼の人生も、僕の人生もここで大きく変わったと思います。
 そうやって中村選手のサポートをしていくなかでボッチャに携わるようになっていって、2021年の東京パラリンピックではトレーナーとして火ノ玉JAPANに携わりました。

——その後、新監督に就任されました。メダルを獲得したチームを引き継ぐ難しさなどはありましたか。

井上:はじめは周りのスタッフの皆さんがとても頼りになるので「大丈夫だろう」という楽観的なところもありました。でも実際監督業をやってみると、監督だからこそ見えてくるものもたくさんあって、徐々に不安やプレッシャーが出てきました。それこそ今も不安はありますが、自分にできることを最大限やろう、と前向きに取り組めるようになっています。自分が火ノ玉JAPANのために何ができるのか。それを常に考え行動しています。

 それこそ、最初は前監督の背中を追いかけて、前監督と同じようにやろうとしていたときもありました。ですが、やっぱり自分は前監督のようにはできませんし、チームから自分に求められているものは、前監督とは違うと思えるようになっていきました。それに気づいてからは、自分の色というか、自分ならではの考え方で火ノ玉JAPANを強くしていこう、と気持ちを切り替えて取り組めるようになりました。

——監督に就任されて、まずはどういう取り組みを行ったのでしょうか。

井上:国際的に見ても、火ノ玉JAPANの技術力というのは、非常に高まったと思います。そういうなかで、チーム一丸というテーマを掲げてコミュニケーションを大事に取り組んできましたが、まだ足りていないところがあると私は感じていました。まだまだ選手同士でコミュニケーション不足の部分があり、スタッフと選手間のコミュニケーションもそうでした。そこに課題があると感じたので、コミュニケーションを重要視した取り組みを推し進めてきました。

――なぜコミュニケーションなのでしょうか。

井上:自分が見えている世界と、他人が見えている世界は違うと思うんです。
自分にできること、やりたいことも違いますし、それを表現できないと、本当の意味で意図が伝わらないんですね。もし試合中に仲間同士で伝達がうまくできていないと、選手のプレーに迷いが生まれ、結果に影響してしまいます。だから、まずはもっとコミュニケーションを取って、仲間たちが何を考えているのか、何を見ているのか、何をしようとしているのか、何がしたいのか。そういったことをしっかりと伝え、もっと深いところで理解し合うことが、さらに良い結果を残すために必要なことだと考えたのです。

——その初陣として、昨年12月にリオデジャネイロで2022世界ボッチャ選手権が開催され、そこで金メダルひとつを含む4つのメダルを獲得する成果を挙げられましたね。

井上:選手たちが頑張ってくれたおかげで、非常に好成績を収められたと思います。ただ、まだまだ伸びしろはあるとも感じていて、そこを次のパリパラリンピックまでに強化していこうと考えています。

——強化ポイントというのはどこなのでしょうか。

井上:今もサポートは受けているのですが、プレーの内容はもちろん、栄養や動作といった細かい部分まで掘り下げた科学的な取り組みに着手したいと思っています。どうやったら、選手のパフォーマンスをもっと引き出してあげられるのか。様々な角度からアプローチしていって、選手の潜在能力を引き出してあげるようにすると、パリパラリンピックではさらに多くのメダル獲得という目標を達成できるのではないかと考えています。
 また、普及活動をすることも選手たちの強化のみならず、スタッフの育成にもつながると考えています。普及と強化の一体化ですね。普及活動のなかで、今まで関わったことがなかったいろいろな分野の人と出会いがあり、新しい気づきを得られます。ひとつの視点だけではなく、もっと視野の広いスタッフを育成することにつながるんですね。選手強化の面で言えば、キャラバンなどで小学校を訪問したときに、選手が小学生の前で実演するだけじゃなくて、言葉や表現をして他者に伝えなければなりません。自分のやっていることを分かりやすく言語化、表現をしないといけないんですね。それも選手にとって非常に大切なトレーニングになると思うのです。選手、スタッフには、もっといろんな経験をしてもらい、そのなかで様々なことを学び、それを競技につなげていってもらいたいと考えています。

——ありがとうございます。最後になりますが、火ノ玉JAPANのファンの方々へのメッセージをお願いします。

井上:はい、火ノ玉JAPANは非常にコミュニケーションを大事にしているチームです。試合ではプレーはもちろんですが、選手同士のやりとりや、プレー以外の顔をぜひ見てもらいたいと思っています。緊迫している状況にも関わらず、選手はその緊張感すら楽しんでいるように笑顔を見せる瞬間ってあるんです。そういう姿を見てもらえると、きっとボッチャっていう競技の楽しさを感じてもらえると思いますし、そこから自分もやってみたいな、と思ってもらえたらうれしいです。皆さんから応援してもらえるようなチームになれるよう、私たち選手、スタッフ一丸でこれからも頑張っていきますので、応援、よろしくお願いします!

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――ありがとうございました。

火ノ玉JAPAN新監督 井上伸

text/interview/田坂友暁/ direction/新井大基 小倉大地雄

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